Les Essais d'Unevertu

2008年11月24日

食の細道・その8~トマト農家の重田さん宅訪問

日曜日は朝早くから、栃木県小山市のトマト農家、重田茂勝さんのお宅を訪問させていただきました。

重田さんは生産したトマトをすべて地元向けに出荷なさっているという、まさに「地産地消」を地でいくような生産者の方です。重田さんちのトマトは主にとちぎよつ葉生協さんに出荷されており、それ以外のトマトは重田さんがご自分で運営なさっている2ヶ所の直売所で販売されています。他とは一味違ったおいしいトマトの生産者として、地元ではちょっと知られた存在の方です。おおらかで知的好奇心も旺盛、優しくて笑顔が素敵な方で、私が尊敬する「人生の達人」のお一人でもいらっしゃいます。

この時期にトマト?とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、ハウス(半促成)栽培を行っている農家では、来年度に向けてトマトの苗作りが始まっています。

草丈20~30センチのトマトの苗がハウス圃場内に整然と植えられています。これらの苗は先週植え付けたばかりだそうです。こちらの圃場の面積は約20アールだそうで、同じ広さの圃場がもうひとつあり、合わせて約40アールの敷地でトマトが栽培されています。ところどころにぶらさがっている黄色い札はホリバーと呼ばれるもので、害虫防除に役立ちます。害虫の黄色い物体に引き寄せられる習性を利用したものでして、ホリバーの表面はハエ取り紙のような粘着性になっており、害虫がくっつくと離れなくなってしまいます。このような様々な工夫を凝らして、低農薬のトマト作りが行われています。

 

植え付け前のポット植えの苗にかん水をしているところです。重田さんによれば、トマトにはできるだけ水やりを控えて、根を広く張らせることが重要なのだそうです。ポットの苗も状態を見ながら、枯れる寸前で水をやるようにしています。こうして苗の頃から水不足に対応できるように「クセ」を付けているのです。といっても、かん水は天気や置き場所の日当たりかげんとも相談しながらの難しい作業なので、長年の経験がモノをいうそうです。

重田さんちのトマトはすべて接木されています。栽培されているトマトの品種はサカタのタネさん開発の「サンロード」と武蔵種苗さん開発の「かんたろうジュニア」なのですが、台木にはともに別の強健な品種のトマトが使われています。重田さんいわく、「丈夫さ」と「おいしさ」を兼ね備えたトマトは日本にはまだないとのこと。ヨーロッパの地中海地方や北米西海岸では両方を兼ね備えた品種が栽培されているそうなのですが、そのような品種は日本の気候に合わないため、国内ではなかなか育てられないのだそうです。そのような事情の一方で、欧米では調理に使う加工用のトマトが主流なのですが、最近では水気が多くて生食に向く日本のトマトが海外でも注目を浴びているそうです。日本の品種はアメリカ、スペイン、韓国、中国などにも移入され始めています。

 

重田さんちのトマトのおいしさの秘訣は、その土作りにもあります。左の盛り土のように見えるものは、地所内の雑木林から集めた落ち葉を中心に、稲ワラと米ぬかを混ぜて2年間寝かせた堆肥の山です。乾燥する冬場には、これに田んぼの土を混ぜることで堆肥内の水分を高める工夫がされています。畜ふんなどのきゅう肥分は一切含まれておらず、すべて植物質の原料からなる堆肥です。これがトマト栽培のための土作りに大きな効果を発揮します。

離れてみると普通の土の山にしか見えませんが、右の写真のように中を掘ってみると細かく分解した植物質からなる堆肥であることがはっきりとわかります。土をふかふかにしてくれる、トマトの栽培に適したC/N比を備えた堆肥の出来上がりです。

さて、午前中のトマトの作業にひと区切りついたところで、重田さんが所有されている広大な雑木林でのマキ拾いにご一緒させていただきました。

小山市出井地区で代々農家をなさってきた重田家は、同地区に4千坪近い広大な雑木林を所有しています。国道4号線バイパスをまたいで広がる雑木林内には、オオタカなどの猛禽類をはじめとして、さまざまな鳥や小動物が住み着いています。重田さんは自らもその一員である地域活動クラブ「杣人(そまびと)クラブ」を通じてこの雑木林を一般の人々にも開放して、さまざまなイベントを開かれています。(実は私もそのメンバーです)

この日は「杣人クラブ」のメンバーのフランス文学者、池田先生が遊びにいらっしゃいました。

雑木林の中には、炭焼き小屋やパン焼き窯、演劇を上演するための舞台まで作られています。池田先生は朝早くからお見えになられて、パン焼き窯に火を入れておかれました。

 

池田先生はピザの材料をお持ちになり、この釜で焼き上げたピザを一同に振る舞ってくださいました。おいしすぎて、もう、何も言えねえ (T△T)

 

午後からは「杣人クラブ」の会長で通称「茂木の仙人」、山川さんと、農業試験場にお勤めのいなせなアニキ、稲葉さんらもお見えになり、池田先生の主催で、重田さん宅で「ボジョレ・ヌーボーを飲む会」が開かれました。ボジョレの中でもヴィラージュ系の銘柄4本を皆で楽しみました。今年のボジョレもいい出来ですね、実においしかったです。

メインディッシュはイノシシ鍋です。池田先生が足利で獲れたイノシシの肉を持ってきてくださいました。ぷりぷりとした、なんとも言えない食感でとてもおいしかったです。今回は、これぞ「食の細道」という感じでおいしいものを堪能しました。

11月30日(日)には、上記の重田さんの雑木林内で、「杣人クラブ」の主催による「まるごとイノシシ」の会が開かれます。事前予約があればどなたでも参加できます。参加費として、材料費などの実費1,000円が必要です。今週の下野新聞と大手新聞地方版に、「まるごとイノシシ」の案内記事が掲載されるはずですので、詳しくは新聞紙上をご覧ください。私もお手伝いと取材を兼ねて、朝8時から現地入りしております。よろしくどうぞ。

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